2009/10/28

process:7 ソフトウェア

GalvanicFrameの制御アプリの画面



GalvanicFrameでは、センサーからの情報をアナログ入力ボードを経由して、Macに集約します。Macでは、センサーの現在の反応値を元に、どこにどれぐらい荷重がかかっているかなどを計算します。

アナログ入力ボード



アナログ入力ボードは、process 3で紹介した基板です。アナログ入力ボードにもPICというマイコンを使っているので、こちらにもプログラムが必要です。とはいえ、シンプルなプログラムで、センサーの値を取得し、それをシリアル経由でパソコンに送るというものです。実際には、RS-485という通信方式を使い、複数のセンサー入力基板を数珠つなぎにしてMacに繋ぎます。

Macに入力されたセンサー値をもとに、次はLEDをどのように光らせるかを計算し、LED調光ボードへと値を送ります。調光ボードも、アナログ入力ボードと同様に、PICを使いRS-485で接続します。

基板類と制御ソフトがつながり、センサーの値を使いLEDを調光します。これとは別に、画面に数値などを表示する機能を作ります。そちらについては、別のエントリーで紹介したいと思います。
(ここで紹介した内容は松山が担当。表示される画面のデザインは平原が担当。)

会場で調整している様子



実は、今回のGalvanicFrameでは、このソフトが一番苦労しています。正確に言うと、歪みゲージを初めて使ったので、それが原因とも言えます。というのも歪みゲージの増幅回路をシンプルにしているので、どうしてもノイズが現れるのです。そのノイズをなるべくカットし、欲しい変化量を取得しやすいデータへと変換しながら、LEDの反応をプログラムしていきます。
このノイズとの戦いが最後まで続いてるんです。。。

それはさておき、このソフトでLEDの光らせ方も決定します。荷重がかかったときにどのように光らせるか。
今回は、GalvanicFrameという名前からもイメージできるように、ビリビリした感じの光り方にしてみました。また、音もビリビリした感じにあわせて、チ、チ、チ、と音がなります。

外観の意匠のどこか懐かしいレトロ・フューチャー的な印象と合わせて、どこか無骨な、ぶっきらぼうな感じのニュアンスで仕上げてみました。実際にごらんになられた方、どうですか?


作業としては、c言語のコードを並べていくようなとても無機質でロジカルなモノですが、作っているのは、座ったときにどんな印象を与えるかという印象に深く関わる部分なんです。この感じ、最近ではいろんな方が経験してると思いますが、なんとも不思議な作業ですよね。僕は、こういう世界、結構好きです。

2009/08/24

Process:6 配線



次は本体にセンサーやLEDを取り付ける作業です。

既にできている部品同士を組み合わせるだけ、と甘く見てはいけません。センサーとLEDはコントロール基板まで配線する必要があります。基板をボディに取り付ければ、配線距離は短くなりますが、スマートな外観が損なわれます。いかにシルエットを崩さず、すっきりと実装するかが大きな課題でした。で、出した結論は、


「頑張って丁寧に作る」


基板は台座の板の中に仕込み、数百本のエナメル線を一本ずつ鉄のボディに沿わせて接着します。そして、ゴム状の塗料で塗装し表面を仕上げます。


綺麗に並んだエナメル線




会場での塗装作業。汚れを付けないよう慎重に。


これまではメンテナンス性を考慮して、パーツの交換が容易な実装を行ってきましたが、今回はこの後戻り不能の手工芸的な方法によって、極めてシンプルな外観を実現できました。


存在に気づかれない事も多い底板。

2009/07/24

process:5 溶接


溶接をする八木澤 鉄棒の間に見える四角錐のものが治具



いよいよ本体を形作る重要なプロセスです。
Galvanic Frameは太さ9mm鉄棒を使います。
CGや模型を検討して起こした寸法通りに鉄棒を切り出し溶接していくのですが
基本的に全てトラス構造の為同じ形状の繰り返しになります。
治具(鉄棒を固定する道具)を作ってそれに合わせて溶接することで同じ寸法のユニットをたくさん作ることができます。
各ユニットのサイズにバラツキがあると全体の形状や寸法に影響が出ますので、治具作りは慎重に時間をかけて行います。

溶接した後グラインダーで溶接部位の形を整え、最後は油焼きで表面処理をすることで黒色のGalvanic Frameの外装が出来上がります。



機械油の匂いと工具に囲まれた工房にいると何故か落ち着きます。

2009/07/10

テレビ放送のお知らせ

「骨」展を取り上げたテレビ番組のお知らせです。


■デジタルスタジアム・明和電機セレクション
放送局:NHK BS-2、BS-hi
放送日時:
BS-2 7/11(土)午前0:00~ ※7/10(金)の深夜24:00
BS-hi 7/13(月)午前1:25~ ※7/12(日)の深夜25:25
番組HP:http://www.nhk.or.jp/digista/

出展作家の明和電機・土佐信道さんがキュレーターとして出演され、
展示のVTRや、山中さんのインタビューを交えて紹介されます。
あと3時間ほどで始まってしまいますが。。。


■情報フレッシュ便さらさらサラダ
放送局:NHK総合(東海三県向け)
放送日時:7/13(月)午前11:30~12:00
番組HP:http://www.nhk.or.jp/nagoya/salad/index.html

「骨からくり『弓曵き小早舟』」を出展されている、玉屋庄兵衛さんが生出演します。

2009/07/07

骨展動画いろいろ

骨展の告知動画ができあがったので、ご紹介します。
映画の広告のように来場者のコメントをたくさん聞けます。皆さん楽しんでいただけたようでよかったです。動画で興味を持たれた方は是非会場に足を運んで、実物に触れてほしいと思います。



他に骨展の動画がないか、ちょっと気になって探してみました。

明和電機「WAHHA GO GO」21_21 DESIGN SIGHT 山中俊治ディレクション「骨」展

「Phasma」の実演—「骨」展@21_21 DESIGN SIGHT

「Flagella」21_21 DESIGN SIGHT 山中俊治ディレクション「骨」展より

2009/06/22

process:4 模型


実際に写真に撮るとまるでCGですね



スケッチやCGで大枠の形が決まったところで、模型制作に移ります。模型制作は全体感を把握するだけではなく、本番の制作行程を決めるには必要な行程です。また、CGだけではわからない問題点も結構発見できますし、何より実際に立体になるのですからこれから作るものの具体的イメージを他のメンバーと共有できるメリットがあります。
MONGOOSEはグループで行程を分担して作業を進めて行くスタイルですのでメンバー間でのイメージの共有は大切です。



模型制作する八木澤 '09年2月



今回は6分の1サイズでの制作です。素材は2mm径のプラ棒を使用し瞬間接着剤で接着します。(本番は9mmの鉄棒を溶接)
ここで起こる問題は大体本番でも起こり得るので、慎重に対策を考えながら進めます。組み立て順序を間違えると無駄な時間を費やすことになりますし、精度も出なくなります。そして最悪の場合組み立て不能になるのです。

それにしても、完成に向かうワクワク感は本制作の時のそれと遜色ありません。この後に控える本制作に向け気合いが入るのです。
模型を制作することの本当の役割りはモチベーション維持なのかも知れません。

2009/06/14

process:3 基板

半田付けする松山 '09年5月


Galvanic Frameでは、いくつかの電子回路を使用します。
電子回路を使う作品では、既存の基板をネットで購入して使うというやり方もありますが、我々MONGOOSE STUDIOは、いつも自前で基板を設計制作します。
基板のエッチングは大変なので、発注することもあるのですが、今回は基板の設計から制作までを、全部メンバー内で完結しました。
MONGOOSE 100%です。

今回は初めて歪みゲージを使ったので、まずは実験から始まります。

1. 実験(ユニバーサル基板を使ってざっくりとテスト)
2. 基板の回路パターンをデザイン
3. 試作基板をエッチング、半田付けをして動作確認
4. 量産(ひたすらエッチング、ひたすら半田付け)
5. 動作確認
6. 作品へと組み込む

半田付けする松山 '09年5月


僕、松山はMONGOOSEの中で、基板からMacプログラムまでを担当していますので、できれば基板の半田付けは僕一人で責任を持って行いたいところですが、量が半端じゃないので、今回は、皆に手伝ってもらいました。
日頃グラフィックデザインをしている人とかが、半田付けしてる様子は結構面白かったです。
みんなさすがに器用なようで、のみこみは早いですね。

とはいえ、僕は半田付けについてもプロ意識を持ってやっているので、語ります。

半田は水のように扱え。
コテを筆のように使うな。
熱は最小限だけ与えろ。

職人は自分の仕事にはうるさいのです。